結局パナソニックに戻る理由は「使う人」が設計しているから、と推測。冷蔵庫。
理系の端くれで、家電芸人が何か言ってますなー、と暖かく見守る程度に、家電なども技術目線でウォッチしてます。
購入時は、表層的なデザインや飛び道具的な特徴に飛びつくことはしないで、基礎的な技術の確かさ、にお金を払いたい派です。
嫌な客ですねー。
そんな我が家の家電、知らないうちにパナソニック製が増えてます。
昨日、冷蔵庫を見に行って、そこでもやっぱりパナソニック。
なぜなんでしょう、という記事。
過去にもブログで取り上げたパナソニックの1ボタン炊飯器
こちらは、シンプルな炊飯器の記事です。
モノやサービスの設計をする時、目的からさかのぼる「デザイン思考」というやり方がありますが、ちょうど購入した炊飯器でそれを解説したもの。
こちらもパナソニック製。
美味しいご飯を追求して、様々な機能に工夫を凝らした炊飯器はたくさん
そんな中で、
速く炊ける
だけ、に特化した、ボタンが1つしかない炊くだけの炊飯器を購入。
食べたい時に炊く、がある意味究極の「炊き立て」です。価格も5000円いかないくらい。
令和のママレンジ、と表現するほど、なんかかわいい炊飯器で毎日大活躍。
ポイントは「食べたい時にすぐ炊ける」
という人間側の行動を知ってるから作れた、という部分。
マーケティングや流行を考えれば、なかなかこの機能一つ、という製品は出しにくい。出す理由が一つしかないからです。
高機能なら、あれも有利、これも売り、と様々な「内部で発売を決定する検討材料」があります。
でも、この製品はたった一つ。
それを発売決定会議で通す文化がある、ということでしょう。
他者にできないこの文化が、今回着目した「使う人」ファーストの視点を、パナソニックは持っているのでは?と想像しました。
今回の冷蔵庫、の前から冷蔵庫には着目
冷蔵庫も古い家電です。
冷媒と言われる、圧縮すると液体、それを気体にして熱を下げてモノを冷やす、という仕組みも生まれた当時から原理は変わりません。
フロンガス、というオゾン層を破壊する!と言われてる冷媒が多く使われてました。今はフロンガス以外に置き換わってます。
その冷媒を圧縮するコンプレッサー、という心臓部。
気体を圧縮するにはかなりの力が必要。なので、コンプレッサーはかなり頑丈に作られてます。当然重量もあります。
冷蔵庫の裏の下の方に、黒い鉄の丸い大きめの部品があるタイプが多いのですが見たことがありますでしょうか?
これまでの多くの冷蔵庫の一番下にコンプレッサーが置いてあります。
部品の中で一番大きく一番重いので、ほとんどのメーカーは、当たり前のように一番下に設置。(ただ、発明されたばかりの冷蔵庫は一番上にありましたが、すぐに一番下になりました。)
最新のパナソニックは、コンプレッサーが上!?
コンプレッサーを一番上に設置する、ということは?
①一番上の一番奥、はデッドスペース
まず、見えない、手が届かない、だから使いにくい、というスペース。
②コンプレッサーが小さく設計できた
このことで設置場所の自由度が増えました。
ここで、「では最上部に置こう」と簡単にはいかないのが日本の会社。
しかし、この改革を成し遂げたのかパナソニックです。
きっと他にも生まれる利点も、判断材料になったはす。例えば、
③最下部に置かれることが多い、引き出し式野菜室や冷凍スペースが、奥までの最大サイズに拡大できる
これはメリット大きいです。
デメリットは、重心が高くなることでしょう。でも、小型に設計できて、③のメリットの方が上回る。
そんなわけで、冷蔵庫の選択肢はパナソニックになってる状態で家電量販店行ったら…
ドアは一枚?二枚?という問題
マンション設置を見越した60センチ幅と、制限のないそれ以上の幅。
そこでドアが一枚ドアか、観音開きか、に分かれます。我が家はずーっと一枚ドア。
観音開きにはいくつかの理由があり、あまり選択肢に入れてませんでした。
①どっちに入れたか忘れたら結局両方開ける
整理整頓か上手な家庭ならもちろんいいんですけどね。
②両手を使うことになる
割とそういう作りが多いです。
③冷蔵部の下の方にあるチルドルームの引き出しを出すときは、両方のドアを開ける必要かある
これです。割と面倒に思ったのは。
さて、ここでこの①②③をおさらいしてみましょう。
これ、実際に使ってる人が必ず思うこと。
なのに、解消されてない。
「使い人の不便」が割と明らかに存在するのに、製品に反映されない理由を考えてみました。
製品化への長い道のり
ある製品が、構想から実際に販売されるまで、には大変長い時間がかかります。
設計の手前の新機能の開発や研究は、並行して行われてるとして、基礎設計が終わったあたりから考えてみます。
基礎設計終わり
↓
グループ内説明
↓
商品化会議に出し説明
↓
コスト、プロモーションなども検討
↓
発売決定
↓
量産設計
↓
承認
↓
製造
↓
販売
もちろん、戻ったり、他の要素ももっと検討しますが、おおむねこんな進行かと。
日本型の会社組織で日本型の承認プロセスを経た製品は、高品質で均一で安いものを作ることには向いてます。
向いてないのが、
画期的
先進的
目から鱗的
なもの。
理由は簡単。たくさんの人が意思決定に関われば、必ず従来との違う部分が攻撃されて無くなっていく傾向にあるからです。
この時に力を発揮すると思われるのは「いかがなものかおじさん」。
本質的な議論ではなく、「従来なかったから」という理由だけで「いかがなものか」という意見を出す人。
だいたい年齢も上で、影響力は若手の数人分あります。なので、意見が採用されやすい。
結果、すごい!という市場の評価を得られそうな機能もお蔵入り。
そして、新興勢力のメーカーが話題をさらう。
新興勢力は、オーナー型組織で、決定責任者が1人「やりましょう」と言えば進みます。
今回見つけた「使う人」視点の工夫は観音開きドア問題に一石を投じる
ここに来るまで長々と書いてしまいましたが、サービス設計に重要なことだらけなので、ご容赦ください。
今回見つけたのは、
チルドルームの横幅を敢えて狭くした工夫
です。普通にたくさん入るように設計しますが、見つけた製品は、非対称の観音開きのドア、大きい方を開いた状態で引き出せるようになってるのです。
片方だけ開けて使えること。
冷蔵庫の省エネ的利用は、利用者にとっても重要。用もない開け閉めで怒られる子供のなんと多いことか。
毎日の利用でも極力、ドアの開け閉めは片方で済ませたいわけです。
幅を狭くしても、ドアの開け閉めを重視した考え方。
「使う人」の意見として実際どちらが多かったのでしょう?
でも、開け閉めを重視した。
これは、設計側の上流だけでなく、様々な段階の意思決定の場にも「使う人」が存在しているのでは?と考えたわけです。
実際にヒアリングはしてませんので、想像。
でも、発想法的にはこの状態を作ることは重要です。
ユーザーをリアルに想像する
実際にすべてのユーザーからのヒアリングを事前にすることはできません。
多くのサービス設計はユーザー像を想像する必要があります。
そこで必要なのは、想像力。
きっとこうやって使ってくれるだろう、という想像がどこまでリアルにできるか?で、設計の方向は変わってきます。
設計者が機能を重視した形で多いのが、
・やたらボタンが多い操作UI
です。同時に一つしか操作しないのに、予想される操作のボタンが全部出てくる。
ハード設計をする場合は、あらかじめ必要なボタンを設置しないといけません。これをアプリで実現するときに、全部置いてしまう必要はないのです。
必要なタイミングで必要なUIを、混乱しないように変化させる。
このあたりはゲームが得意ですね。
kindleでそんな話も出してみました。
拝啓教育関係者さま ゲーム開発者は社会のお役に立てるのです: ゲーム開発の作業を抽象化して説明します
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重要なのは、どのようなリテラシーの人か、どのような目的で操作をするのか、どのような手順で判断をするのか、などを考えること。
この「想像」も、「よく考えてみましょう」ではできない「技術」でもあります。
DXという言葉が流行ってますが、その前にアナログの行動をしっかり分析することが大切なのです。これもkindleにしてみました。
下のリンク:DXの前にアナログの行動を考えよう、という自分記事
結局、パナ、すごいな、ってことです。
しかも、この記事、この一本で終われなかった!
次回、掃除機。ゴミパック問題が解決!?