000: ゲーミフィケーションを理解するには手法ではなく原理を知る事

ゲーミフィケーションを理解するには手法ではなく原理を知る事

昨今、ゲーム作りのノウハウを他の分野にも活かそう、という考え方で、その原資として「ゲーミフィケーション」という考え方が産まれてきました。

ゲームがあれだけ人を熱中させるのだから、別のサービスに応用できれば、そのサービスにも熱中してもらえる!ということでしょうか。

ゲーム業界に古くから住んでいる自分としては、一定の評価をいただいたことに対しては嬉しく思いつつ、実際に展開されている内容を拝見すると、若干の物足りなさを感じます。

後追いの手法だけだと応用が狭い

どの分野のノウハウもそうだと思います。

  • まずはこれをやって
  • 次にこれをやって
  • できた?

では、サンプルと似た例ならば適用できるけど、ちょっと外れると適用しにくい。

大事なのは、「なぜそのような行為を必要とするか」まで理解を深めておくこと、と考えます。

そうすると、ある事例にはこれ、別の場合はこのように変えてみよう、と応用が利くと思うわけです。

ノウハウのみ、をインプットするのはもったいない

巷のゲーミフィケーション解説本を見ると、ある意味ノウハウ的に書かれてます。

元々現場にいた頃を思い出すと

  • 教科書もない
  • ルールブックも無い
  • ただ一つの目標に向かって試行錯誤

この目標に向かい、実際に色々な手法を試しては壊しながら、まさに試行錯誤の連続を行なっていました。

その結果としてノウハウにまとめることができた、と考えられます。

でも、それは「特定のゲーム」で産まれた事例を集めたものだったら?それとは違うケースにぶち当たった時にそのまま使えるでしょうか?

なので、事例も大切ですが、「ノウハウ」を産んだ根源的な目標とそれを達成するための考え方を理解することができれば、別の事例に向かい合う時に、自分で新たなノウハウで対応できるのでは、と考えています。

なんでゲームに目を付けたのか?

そもそもゲームのお作法を他の分野に持って行く必要はなぜあったのか?

ものすごく簡単な現象で言えば、

「ゲームは人を夢中にするレトリックが満載、だから徹夜してまでゲームをしてしまう」

「それを他分野に持って行けば、より引き付けるサービスになるのでは」

ということかと思います。

実際、寝ないでゲーム!は大げさではなく日本全国いや、世界で発生していると思います。

三国志の歴史や武将や国の名前なんかをゲームを楽しみながら覚えてしまう、なんてことはあります。元素記号はちっとも思えないのに、モンスターの名前どころか鳴き声まで覚えてしまったり。

勉強なら途中で飽きて投げ出すことがあっても、ゲームは止めろと言われるまで止まらない。

「もう体に悪いから勉強はほどほどにしなさい!」

こんなこと、一度も言われたことはありませんでした。(自分は!)

このように、ゲームは継続的に人を引き付ける力がある、ということは認識されていると思います。

続けてもらう、ことに対する弱点

ゲーム屋さんのただ一つの目標は「遊び続けてもらい満足してもらうこと」。

ただ一つの、と言いながら2つの要素が入ってますね。まあ後半は当たり前として前半。続けてもらうにあたって、次の項目で説明する、決定的な社会的弱点があることを、当時のゲーム屋さんはみんな実感していた、ということがあると思っています。

その弱点は、今は少しだけ薄れてきていますが、根源的にはまだまだ残っている考え方です。

弱点:そもそも生活におけるゲームは「必需品ではない」

そもそもゲームは生活必需品では無い、ということです。遊ぶためにお金を払うことすらしていただく。

逆のもので考えてみます。

義務教育中の勉強は必需品。 この勉強は、例え教え方が多少まずくても、テキストが読みにくくても、進め方に快適性が無くても、必需なのでやってくれる割合が高い「コンテンツ」です。。

対してゲーム。

ちょっと分からないこと、面白く無いことがあると、そこから得られるゲイン(多くはカタルシス)が少ないと予測されて、より多くのゲインが得られる他のゲームや、必需品の処理に逃げられてしまう。

算数の替えは無いのですが、ゲームにはある。 だからこそ、継続してエンディングまで続けてもらう、言ってみれば「逃がさないための工夫」が満載なわけです。可処分時間の奪い合いです。

ワナ、工夫、作戦、色々な表現はできますが、そこには相当頭を使って、相当失敗をして、ある種のノウハウができあがってきた、と考えられます。

こんな経験も

とある最高学府の研究室でのできごと。

ゲームのノウハウは色々便利に展開できるよね、という話をそこの名誉教授と盛り上がっていました。そこに、同じ研究室の別の教育学の教授が来たので、「ご挨拶を」と名刺交換。ゲーム系の仕事、と分かった時の彼の一言が忘れられません。

「ゲームで何でも解決できると思ったら大間違いだからね」

社会人同士のご挨拶の第一声にいただきました!

でも、影響力は多分認識されていたからこその、ご評価の言葉として謹んでいただきました。

実際、何でも解決はできません。でも、解決に手助けになる手法を提案はできます。

(そもそもゲームなんて、当たるか外れるかの世界です。そこで色々やってきたわけです。でも、考えれば世の中のサービスだって同じだと思うんですが・・・)

次から、少しずつ具体的な話を蔵出ししていきます。

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