0025: DX7 世界に名だたるFM音源のデジタルシンセ

世界に名だたるFM音源のデジタルシンセ

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オシレーターに電圧変化を与え、音量変化を付けてスイッチオン、オフ、で音を出すアナログシンセ。テルミンは、コントロールに静電容量の値を使いましたが、それをスイッチや抵抗値にすればアナログシンセです。

アナログからシンセのおさらい

それまで人類が聴いたことがないコントロールされた音を出したことで、様々な表現やジャンルすら産み出されました。 また、楽器の特性として、「それまで大袈裟な機構が必要だった楽器」を、パラメータの調整で見立てとして作れる側面も。 今度はそうなると、その見立てを進化させたくなるのは当然です。

オシレータを組み合わせたり、エンベロープをコントロールしたり、フィルターで成分を調整したり、さらにそれを時間変化させたり…などが試されましたが、アナログの機構でそれを実現するのは大変。発振回路も増え、パラメータコントロールの回路も増え、それに伴いアナログ部品も増えます。

アナログ回路が肥大すると、発熱、安定性、アナログデバイスの劣化、など、色々な不具合も増えてきます。

アナログ部品は不安定、だからYAMAHA

工業的にある程度バラつきが出るアナログ部品の組み合わせでは、巨大になりすぎ、しかも品質も保ちにくい。

そこで、コントロールする数値を部品で作るのではなく、計算で作る方向に。いよいよ、このあたりからデジタルへの移行が始まりました。

YAMAHAは楽器メーカーではありますが、LSI製造もやっていました。このアナログ→デジタルの流れは、ある種の必然だったかもしれません。 さらに。

アナログの楽器製造もやってる訳だから、音を作る段階の音響的な分析もお手の物。知識と計算だけの技術者だけで作った場合、それが本当に音楽や芸術的に良いか?という感性に関わる部分の判断ができない場合もあります。楽器製造ノウハウ+最新のデジタル技術=YAMAHA、というわけです。

単なる電子工学の研究者がピアノの音をシミュレートする、とは違って、電子工学の技術とピアノ製造のノウハウを使ってシミュレートする、という事には大きな違いが産まれます。

ある意味奇跡の組み合わせですねー

楽器の波形は複雑、計算でできる波形は(当時)単純

楽器が作る波形は、単なるサイン波ではなく、複雑な形。 FM音源では波形を組み合わせ、一つの波形ではなく、いくつかを合成して複雑な波形を作り出しました。 しかも演算による出力は安定。それまでのシンセのようにステージ1時間前から通電して発熱等によるコンデンサの挙動が安定するまでピッチもフラフラ…も無く。

そして、リアルな音の追求も、シンセとしての新たな音の追求も、機械の面倒を見る必要が無くなった分、加速的に発展しました。いわゆる「シンセサイザー」という楽器が一定の地位を確立した事に貢献した…と大袈裟に描いてみましたけど、結構当たってる気がします。 それでもまた新たな波が来るんです…

初期のFM方式はノイズ成分が苦手

このFM変調方式、計算で作れる波形は、オシレータの数や計算機の数を増やせばどんどん複雑なものができる反面、計算しにくい波形は逆に難しい。 アナログ楽器は構造上、純粋な音程成分だけで波形ができていることは少なく、不規則なノイズ成分が多く、それが楽器特有の音色を作っています。

例えばバイオリン。

弓で弾いてる時、馬の尻尾の毛のキューティクルが、マツヤニがまとわりついてスチールの弦に引っかかります。この時の「ガリガリ」という音。

ピアノのキーを押し下げた時はこんな感じ。

キーの底付き時に、ボディを構成する木の板が叩かれる音。

さらに例えば太鼓。

叩かれた直後は皮が不安定に震動します。いわゆる、どーん、と余韻部分のように安定した振動になる前の音、など。

それでも、ランダム数値を発生する計算、なども駆使しながら、様々な工夫により頑張って来た訳です。

DX7をゴリゴリ使ったミュージシャン

このDX7、単なる世の中の音の模倣ではなく、DX7ならでは、の新しいサウンドをたくさん生み出しました。そっちの方が正しい進化です。そうなるとこの楽器の音作りと操りの名人が出てきます。

時代とデバイスと表現、全てがマッチしたのが、カシオペア。DX7らしい音色が堪能できます。


さらに、新たに開発される楽器も、過去の名器の音を再現することは多々ありますが、今風にDX7サウンドを楽しむことも普通に行われています。

バイオリンを発明した人、というのは分かりませんが、DX7を発明した人、というのは分かる。あらためて考えると、すごい楽器です。

まあ体でもうごかしましょうよ。

DX7の写真
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